PEOPLE
2021.12.12 2021/12/17
キイロ
西宮人vol.9 KENJI TATUUMA
Profile
辰馬 健仁(たつうま けんじ)
辰馬本家酒造株式会社 取締役会長
公益財団法人 白鹿記念酒造博物館 理事長
兵庫県にある世界一の日本酒の生産地「灘五郷」で『白鹿』を製造する辰馬本家酒造株式会社。日本酒文化の継承と、教育・文化事業に注力する。辰馬本家15代当主の次男。
昭和46年5月生まれ
平成 6年3月 甲南大学法学部法学科卒業
平成 6年4月 株式会社三和銀行入行
平成11年4月 辰馬本家酒造株式会社入社
平成18年6月 代表取締役社長就任
令和 2年4月 取締役会長就任
辰馬グループの学校法人 千歳学園 松秀幼稚園の理事長、学校法人 辰馬育英会 甲陽学
院 中学・高校の理事も務める。
キイロ
西宮にゆかりのある、活躍されている方を紹介する「西宮人」第9弾!
酒ミュージアムの理事長を務める辰馬 健仁さんです。
学生の目線から西宮を支えてきた辰馬本家酒造株式会社の日本酒や辰馬さんについて迫っていきたいとおもいます。本日はよろしくお願いいたします!
辰馬さんの歴史
キイロ
現在は酒ミュージアムの理事長としてお仕事されていますが、これまでどのようなお仕事をなさってこられたのですか?
辰馬さん
もともと銀行員をしていて1999年に銀行から辰馬本家酒造に入りました。そこから20年あまり、大半を日本酒の製造販売事業に携わっています。
キイロ
銀行員をなさっていたんですね!
日本酒に携わるようになってからどのようなご活躍をされていたのでしょうか?
辰馬さん
販売活動していく中で気が付いたことが、白鹿は西宮で有名でも東京に行けば、かなりの確率で知らない人がいることです。そこでなにが必要なのか考えるようになりました。
業界で知られているのにエンドユーザーには知られていない、そのギャップを埋めるためブランディングが必要だと気が付きました。ブランディングが大切だと旗を振りながら取締役、常務、副社長、社長と過ごして2017年に父親から酒ミュージアムの理事長をバトンタッチされました。
その時点でも社長の仕事として白鹿啓蒙活動、布教活動をしていたのであまり酒ミュージアムの事業にタッチできていませんでした。社長から会長になってからは文化事業の酒ミュージアムや教育事業の幼稚園に時間をさいてます。
キイロ
日本酒のイメージが強かったので教育事業をなさっているとは驚きです!
日本酒と保育って遠いものに感じるのですが・・・
日本酒から広がる文化事業
辰馬さん
冗談的な答えだと、3歳から5歳のうちから白鹿を刷り込んでおくと20歳になったときに飲んでくれるかなって。(笑)
ちゃんとお答えすると、曾祖父から父へと甲陽学院中学高等学校を運営していく中で、国の力を強くするには人や人材を作るということがありました。そこで祖父は幼児教育の重要性を特に感じていました。そして祖父と父が松秀幼稚園(まつほようちえん)を開園します。現在は私が理事長をつとめています。
教育事業において日本の主食であるお米や、発酵したものの味がわかるような舌を育てる食育を行うことで日本の古き良き食文化が守られると考えています。
お酒とのつながりでいえば、お酒も日本食の一端を担っていてその中に日本酒や焼酎が入るわけです。
松秀幼稚園では田植えや稲刈りをしておにぎりパーティーをしています。
キイロ
本格的にお米を作っているのですね。実は私は一度も田植えを経験したことがないんです。
辰馬さん
一回もないの!(驚)見たこともないのかな?
この辺だとなかなか田んぼはないですからね。今やどんどん街は舗装されて行ってバリアフリー化が進んで土や砂がなくなっていくし、土に触れたり、でこぼこな道を走ったりすることがなくなっていっていると思うんですよね。どろどろになって水たまりができるような場所を保護していこうというのがこの幼稚園。例えば、泥のしぶきを介して良い菌も悪い菌も入ってきて、免疫は上がるので、だんだんと心身ともにたくましくなります。それらは保育とか食育の中で作られていくと考えています。
キイロ
食べる、飲むことが幼稚園の教育まで広がっていくことがとても意外でした。
企業理念から見える理想の形
辰馬さん
曾祖父が「育てる」という企業理念を唱えていまして、「育てる」という理念の上にさまざまな事業が成り立っています。
キイロ
酒造業が土台だとおもっていました。
辰馬さん
もちろん日本酒事業がないとほかの事業まで取り組めなかったですよ。
「育てる」というのは人だけではなくて、対お酒、対微生物という育て方でもあります。
麹菌と酵母菌をいかにうまく育てて、発酵が進んでいって搾って酒粕と日本酒にわかれるじゃないですか、酒粕もおいしいし、日本酒もおいしいっていう状態に仕上げる育て方を人間がしている会社であるので「育てる」というのは幅広いです。
私の理想としては「育てる」から「育て合う」最終的には意識せずともかってに育っているという「育ち合う」ことです。
キイロ
企業理念を大切に酒造業や文化事業にとりくまれているのですね。
米を笑いにかえる唯一の酒蔵へ
辰馬さん
日本酒を作れる酒蔵って日本に1300くらいあるんです。そのうちの辰馬本家酒造が一社です。お米を日本酒にできる酒蔵はたくさんありますが、お米から笑顔につなげられる酒造はそうないと考えています。米を笑いに変えられたら業界唯一、日本で唯一、世界で唯一になれますよね。日本酒を飲んで顔がほころんで、それを見て笑顔になる。
酒ミュージアムでも、この空間は安らいでいいよな、おもしろいなって思えるような文化事業の施設になりたいと思っています。
キイロ
「米を笑いに!」というのは実現されているのですか?
辰馬さん
価値観や味覚は変わっていきます。常にお客さんをみて商売して考えていかないと商売や事業は続かないと思います。
お酒だけでなく、お酒を飲む器やTシャツ、イベントなどいろんな笑いがあります。
「米を笑いに!」を会社内や会社外に布教していっている最中です。(笑)
キイロ
ちなみにおすすめの日本酒のたのしみかたはありますか?
辰馬さん
基本は自由に飲んでほしいです。ただそれでは日本酒に慣れていない人はむずかしいですよね。基本的には温かくするか、常温か、冷たくするかですね。アルコール度数が高いので水やソーダ、ジュース割にしてもいいです。
凍らせてフローズンにすれば口当たりがよく食べられる日本酒になります。完全に凍るわけではないですから。でも、あとから酔ってきますので気を付けてください。(笑)
キイロ
試してみたいです!けど後から酔ってくるのは怖いですね。(笑)
辰馬さん
あらかじめソーダや炭酸水で割ってアルコール度数さげてから凍らせてもいいよ。ジュース割は日本酒じゃなくてもいいけど、どんな飲み物で割ってもバランスがとれます。楽しみ方は液体だけじゃなくて、器を変えたり飲むときの角度を変えることでのどに流れ込んでくる日本酒の量や口当たりが変わって味わいも変化しますよ。
キイロ
日本酒といっても様々な楽しみ方ができるんですね。入り口が広いという印象を持ちました!
学生時代にやっておくべきこと
キイロ
現在私は学生なのですが、学生時代にやっておいた方がいいことはありますか?
様々な経験をされている辰馬さんの考えを知りたいです。
辰馬さん
社会に出るまでに学校でやれること以外のものに没頭することです。経験上、歳をとるたびに一日は24時間になっていくんですよ。やっとかなあかんことあるしもう寝よとか、17時やから帰ろうとか。幼稚園の子どもたちを見ると時間にとらわれずに泥団子をつくったり水遊びしたりと何かに没頭しています。それがだんだんと時計を見て自分の没頭している時間を切らざる負えなくなる。社会人になる前の最後のチャンスですから没頭してみてください。仕事の役に立たなくても、心の支えになると思います。
キイロ
私も没頭できていることを大切にしたいと思いました。
辰馬さんはどのような没頭をされていましたか?
辰馬さん
アーチェリーを中、高、大とやっていました。部活という時間にかぎられていましたけどね。それをやっていれば一生楽しく過ごせられると思っていました。大変なこともありましたが、最後のほうは楽しめました。
西宮と辰馬さんのつながり
キイロ
最後に西宮で長年働かれていますが西宮の好きなところってありますか?
辰馬さん
難しい質問ですね(笑)お墓があるところかな。西宮で生まれ育って企業理念を持って過ごせてお墓がある。ゆくゆくは西宮に埋められる安心感ですかね。
表現があっているかわかりませんが・・・
ただ、学校や代々の家族やそのつながりのある人と強い関係を結んで事業できているところは西宮で働く良さです。
キイロ
辰馬さんだからこそ話せる西宮の魅力ですね!
西宮にある強いつながりの中があるからこそ白鹿の日本酒や文化事業など幅広く行なうことができているのだとわかりました!