CULTURE
2022.07.31 2022/08/01
ナカムラヨシミ
西宮・人気店の舞台裏 vol.7 阪急夙川~kizuki(キズキ)~
西宮には、数々の有名店があります。一見華やかに見える舞台の裏側には、 数々のストーリーがあります。そんな舞台裏にうかがいます。
kizuki(キズキ) (HPより)
*何気ない日常の中で、ふと手にした時に心地良く感じ、目にした時に笑みがこぼれる。そんなささやかな幸福感を与えてくれるモノたちが、この世の中にはたくさんあります。そんなモノたち、そしてその先にいる人たちの存在に気づき、新しい世界に出会い、何気ない日常に彩りが増えていく。
そんな出会いの場に「 kizuki 」はなりたいです。
*雑貨店kizukiは、手仕事で作られた道具、環境や身体への配慮がなされているモノ、伝統を引き継ぎ、また新しく生まれ変わろうとしているモノ。そんな作り手の想いがたくさん詰まったモノを扱うお店です。
お店をオープンするまで
阪急夙川駅から徒歩4分、静かな住宅街の中にkizukiさんはあります。どんな出会いがあるのかワクワクしながら階段をあがると、お店には素敵な雑貨がずらり。思わず手に取りたくなるものばかりです。今回は、笑顔が素敵な店主の酒井淳子さんにお話をお聞きします。
― まずはじめに、こちらにお店をオープンされたきっかけを教えてください。
酒井さん:「子供が大きくなり手が離れて落ち着いてきたので、自分の人生を考える時間が増えたんです。ずっと専業主婦だったので、普段使っている台所用品などで良いのがあったら、誰かに教えたくなるんです。その延長でお店を開いたんです。今はネットで何でも買えますが、実際にお店に足を運んでもらって、こんな良いものがあるよって紹介したくなるんです。例えば、フライパンや卵焼き器って、使えなくなった時に次の『お気に入り』を探すのって大変だと思うんです。良いもの1つに出会ったら、使うたびに『いいな』って思って使えるし、大事に使うと思うんです。悪くなったらすぐ捨てると言うのを、自分でもやめて少しずつシフトしていきたいなって思っています。」
― お気に入りを使うと、使うたびに嬉しくて気分もあがりますよね! お気に入りに囲まれていたいです。 ところで、「kizuki」さんの名前の由来は?
酒井さん:「普段、ちょっとしたことで『気づき』ってありませんか?その『気づき』の場になれればいいなって思います。こんな作り手さんがいるんだとか、いっぱい買わなくてもこれだけで良いかもって気づくことだったり。お店の名前を考えるのは難しかったのですが、ずっとこのワードが離れなかったんです。」
日々忙しくしていると、気づかず素通りしてることって多いのですが、小さなよろこびや発見って、本当はたくさんありますよね。
― kizukiさんは駅からも近くて利便性が良いですよね。お店は西宮にと決めていたのですか?
酒井さん:「子供が小さい頃に引っ越してきたのですが、初めて来た時から夙川や苦楽園は良い場所だなって思っていたんです。それで、お店をやるならこの辺りかなって思っていました。自然が多いのに便利な場所って、なかなか無いですよね。この辺りは住宅街なので静かなんです。」
― ほんと、静かですね。のんびり雑貨を眺めていたくなります。
地元のつながりを大切に
それにしても、色んなジャンルの雑貨がありますね。どのように選ばれているのですか?
酒井さん:「西脇出身なので、播州織の玉木新雌(たまきにいめ)さんや、播州織の残糸を使ったアクセサリー作家さんとは、地元のゆかりで関わらせて頂いています。各地のイベントに出向き、そこで出会った素敵な出展者さんの作品もあります。お店を始めようと思ったきっかけで出会ったものが多いですね。これなら自信を持って皆さんにお勧めできるものばかりです。実際に自分でも何らかのかたちで使っています。」
― お店をオープンする前にたくさんの商品を集めるのは大変そうですね。
酒井さん:「最初はメールで、お店のコンセプトとなぜお願いしたいかをお伝えしたんです。すると、共感してくださったり、快く受けてくださる方が多くて、とてもありがたかったです。例えば、靴のNAOT(ナオト)さんは、お店のオープンがきっかけで知ったのですが、メンテナンスしながら長く使えるのでお店のコンセプトにぴったりだと思ったんです。実際、履いてもすごく心地良いんです。洋服も扱っているのですが、 アパレル業界って初めてなので展示会は緊張しましたね~。(笑)どんな方が来られるのだろう、どんな場所なんだろうって。でも、とても丁寧に接して頂き楽しかったです。」
― 良いものって、作り手も良い人ですよね。
酒井さん:「そうなんです!お店を始めようとしてから、良い方ばかりに出会うんです。お客さんもそうです。」
― お店に入ると、とても落ち着きますね。雑貨はもちろんですが、お店の内装も素敵です!
酒井さん:「 トータルでイメージを共有できて、雰囲気のある質感を出してくれるところを探して、 店舗デザインで有名なDEN PLUS EGGさんにお願いしたんです。さすがだなと思ったのは、お店の玄関の扉は防火上、外せなかったんですけど、雰囲気が出ないからって斜めに壁を作って、扉をつけてくださったんです。この扉のおかげで入って来た時の印象が全然違うんです。」
― ドアが2つあるのは気づきませんでした!さすがDEN PLUS EGGさん、色んな方法があるんですね。私が取材させて頂いたパン屋さんのgnome(ノーム)さんやカフェlokki(ロッキ)さんも、DEN PLUS EGGさんにデザインをお願いされたそうです。
お話をお聞きしていると、良い出会いばかりですが、お店をやってて良かったなって思うことは何ですか?
今がいちばん楽しい!
酒井さん:「以前、息子が小学校で『なりたいもの、夢』を書く機会があって、『雑貨屋の店員さん』って書いたみたいなんです!そんなこと考えたことがなかったので、嬉しかったですね。お店を始めてからの私、楽しそうにしているんでしょうか。お店のことから会話が生まれるのも良い影響力なのかな。家族には本当に感謝しています。夫も『お店をやろうかな?』と行った時には喜んでくれて、すぐに『ええんちゃう?』って言ってくれたんです。夫も子供たちも、外に居場所があって、帰る場所(わが家)があったのに、私だけそれがなかったような。今、私にもその場所ができたのが良かったです。」
「お店を始めていなかったら出会わなかったと思う、様々な分野で活躍されている方々や、作り手さんに出会うことができたのも、とても大きいです。つながりがどんどん広がって、とても楽しいんです。」
― 酒井さんがいきいきされていて、ご主人も嬉しいでしょうね。最後に、これからのkizukiさんを教えてください。
酒井さん:「ネットショップも、いつかはするかもしれませんが、しばらくは実店舗だけでいこうかなって思います。お客さんが来てくださって『癒されるわ』とか言って頂くと嬉しいし、そういう場所があっても良いのかなって思ったりします。おしゃべりだけでも、気分転換に来ていただければ嬉しいです。見てるだけで癒される時ってあると思うんです。そうなれたら嬉しいなって思います。1人でお店をやっているので、のんびりと。お客さんとも、こうやって話してることが多いんです。逆に、自分が他のお店に行った時に、『こういうお店してるんです』って言うと、色んなお話が出来て楽しいです。」
「お店では、竹で作られたトイレットぺーパーなど、環境を意識したものも取り入れ始めました。少しずつですが、そういうものも増やしていきたいなって思います。先日、『売れる商品を売るんじゃなくて、売らなきゃいけないものをいかにして売るか』という言葉を見つけ、雷に打たれた気持ちでした。この言葉を頭の中に置きながら、新しいものを取り入れつつ、でも、あまり考えない方が良いのかもしれません。自分の感覚と言うか、出会いも大事にしていきたいんです。」
「私、今がいちばん楽しいんです。この年齢になって全く違う世界と言うか、出会えなかった人に出会えるなんて贅沢だなって思います。私は『行きたい!』と思うとすぐ行っちゃうんです。すぐ動くって大きい気がします。『猪突猛進型』なので、これからも動き続けたいですね。」
kizukiさんイチオシのうつわ
kizukiさんイチオシは、 神戸市淡河にあるつくも窯 の 十場天伸(じゅうば てんしん)さん のうつわです。十場さんは 泥状の化粧土(スリップ)で模様を描くスリップウェアを中心に手がけています。
酒井さん :「十場さんは、常に新しいことにチャレンジし、前へ前へと進んでいかれる方で、工房を訪れる度に新しい作品との出会いや発見があるんです。このワクワク感をみなさんににもお伝えし、感じていただきたいです。」
我が家で大活躍中!
kizukiさんで購入したのが、『crep』のピクニックラグです。 再生紙でできたレジャーシートで、裏面はポリエチレンラミネート加工が施されています。濡れた地面でも大丈夫です! 表面も水に強く、雨に濡れたり、飲み物をこぼしても、乾かせばまた使用することができます。 通常の紙にはないシワによる凹凸も素敵です。サイズもS、M、Lとあります。お気に入りのデザインを見つけてくださいね!
取材を終えて
kizukiさんに並ぶ雑貨は、どれも選び抜かれた素敵なものばかりです。酒井さんの丁寧な説明を受けながら、何度も「へぇ~、そうなんだ!」とうなずいていました。kizukiさんで見つけたものは、誰かに教えたくなるものばかりです。ご自分へのご褒美や、大切な人へのプレゼントを探しに、ぜひ行ってみてください。ありがとうございました。
INFORMATION
kizuki
- 兵庫県西宮市大井手町5-9 山崎ビル 202
- 営業日時:月水木 11:00-16:00、 土日祝 11:00-17:00
- 火金+不定休
- 阪急夙川駅から北東へ徒歩4分
- https://www.instagram.com/kizuki.shop/