CULTURE

西宮神社の十日戎

十日戎とはどういうものなんでしょうか

「えべっさん」でお馴染みの西宮神社は、全国のえびす神社の総本社です。ここはもう「西宮市にあるから西宮神社なのではなくて、西宮神社があるからここが西宮市という名前になった」というくらいに歴史のある、由緒正しい神社です。

9日17時頃の表大門

えびす神はもともと海からやって来られたとされていて、諸説あるのですが中には「鯨のことである」なんていう説もあるくらいに海や漁と縁の深い神様です。それが中世以降、商業の発展と共に「商売の神様」として信仰されるようになりました。

えびす神社の行事の中でいちばん賑わうのが「十日戎」です。これは毎年1月10日の前後三日間に行われるお祭で、9日は宵えびす、10日を本えびす、11日を残り福と呼びます。今年一年の福、特に商売の繁盛を願う人々がお詣りして、縁起物の福笹を買い求めます。西宮神社には、この三日間で百万人の参拝があるといわれています。

今年、筆者は9日の17時頃にお詣りしました。平日(木曜日)で、会社帰りの人たちで混み合う前にということで、この時間でした。表大門の辺りは既に車が通行止めになっていて、そこそこ大勢の人が居ましたが、特に入場規制などもなく、去年の笹を返納したあとすんなりと本殿まで進むことができました。

西宮のえべっさんの名物といえば、毎年奉納される「大マグロ」です。このマグロに硬貨を貼り付けるのですが、うまく付くと「お金が身につく」という縁起担ぎです。

お詣りしたあとは縁起物の笹を買って、おみくじを引きます。がらがらと振って引き出すと、十九番。……「凶」を引いてしまいました。

境内には多くの出店が出ていて賑わっています。ずっと以前は毎年「見世物小屋」が出ていたのですが、最近はお化け屋敷とかゾンビの館といった小屋になっています。噂では「ヘビ女」のおばあさんが亡くなったから、なんて聞いたことがありますが……。かつては全国に百近い見世物小屋の興業団体があったそうですが、いまはもうほとんど絶えてしまったようです。

南門の方には「あらえびす神社」があります。両詣りといって、十日戎に来た時にはこちらにもお詣りすると良いとされています。しっかりとお詣りして、こちらでもおみくじを引きます。がらがらがら……、あ、今度は一番が出ました。「大吉」です。凶から大吉。嬉しいけど、この落差をどう解釈したらいいのでしょうか。

南門を出ると、十日戎のお詣りは終わりです。今年も無事に来ることができました、とえべっさんにお礼を言って帰ります。

「福男レース」って良く聞くけど、あれって何?

さて、室町時代から江戸時代にかけて、「1月9日の夜にはえびす様が市中を見て回られるから、みんな外に出てはならない」とされる「忌籠」(いごもり)という習慣がありました。実はいまも10日の未明には神社の中で非公開の神事が行われていて、神職以外は境内には入れません。そして10日の夜明け、開門を待ってお詣りをしたのです。

朝4時半頃、門の前で待つ人たち

明治の終わりから大正の頃、阪神電車が開通するなどして広いエリアから参拝されるようになるとともに、一番最初にお詣りすると良い福が授かるという風潮が広まりました。そして「朝六時に開門すると、一斉に走り込んで一番福を目指す」という開門神事、通称「福男レース」に繋がっていったのです。

一斉に走り込みます

朝六時、太鼓の音と共に表大門が開門されると、まず最初に最前列に並んだ百八人が猛然と走り込みます。この百八人は、午前零時にくじを引いて最前列のポジションを手に入れた人たちです。続いて第二列の二百人、そしてそのあとには門前に集まった人たちが一斉に入ってきます。

門を入るとしばらくは土の道のストレートです。それから右に70度くらいのカーブがあって、石畳の道になります。鳥居をくぐって社務所の前で、今度は左に80度くらいのカーブがあります。ここは曲がってすぐに楠が立ちはだかるので要注意です。そして右手に拝殿が見えます。木でできたスロープを駆け上がって神主さんに抱きつくとゴールです。一番福から三番福までが選ばれます。

なお、福男レースといいますが、女性でも参加は可能です。

カーブの先の楠には安全のため布団のクラッシュパッドが

福男に選ばれると、その一年間は「福を授ける人」として西宮神社の行事に参加しなければなりません。忙しいですが、大変な栄誉です。

令和二年の福男の皆さん

以上、西宮神社と十日戎、そして福男レースについて簡単にまとめてみました。皆さん来年はぜひ、十日戎にお詣りしてみませんか?

開門神事に参加するともらえる縁起物

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西宮神社