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西宮人vol.12 YOSHII YOSHIMICHI

Profile

吉井 良迪

1988年生まれ。2011年立命館大学人文学科日本史学専攻卒業。2012年國學院大學神道学専攻科修了。同年、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮に奉職。2018年より西宮神社にて奉仕。2022年現在西宮神社禰宜。

篠田生米

西宮で活躍されている方を紹介する「西宮人」第12弾!
西宮神社 禰宜(ねぎ)の吉井良迪さんです。

毎年正月の開門神事・福男選びや十日えびすで有名な西宮神社。その歴史や神社でのお仕事について、詳しくお聞きしたいと思います。

本日はよろしくお願いします!

吉井さん

よろしくお願いします!

西宮神社とえびす様

篠田生米

西宮神社といえば、福の神であるえびす様がいらっしゃいますよね。そもそもなぜ西宮にえびす様がいらっしゃるのですか?

吉井さん

えびす様は、イザナキ(伊耶那岐命)とイザナミ(伊耶那美命)の子として生まれたといわれています。しかし、生まれつきお体が不自由であったため、海に流されてしまうんです。

西宮に残る伝承では、えびす様は神戸の和田岬に流れ着いたといいます。それを鳴尾の漁師が網で掬いあげ、鳴尾村でお祀りしました。

ある晩、その漁師の枕元に立ったえびす様は自らの素性を明かし、自身を西の宮地に連れていくよう頼みます。その願いを聞いた鳴尾の村人たちは、えびす様をお輿に乗せて運び、その末にたどり着いた場所が、現在の西宮神社であると伝えられています。

篠田生米

そんな由来があったんですね。

では西宮神社はいつごろからこの地にあったのでしょうか?

吉井さん

創建年代は詳しく分かっていませんが、史料をさかのぼると平安時代の末期頃にはこの地でえびす様が祀られていたようです。後の時代には神社の門前に宿場町も広がっていました。

西宮の街は、えびす様を中心に発展していったとみて間違いないと思います。

篠田生米

では西宮神社には少なくとも900年近い歴史があるということでしょうか。すごいです!

ちなみになぜえびす様は「福の神」とされているのでしょうか?今のところあまり「福」の要素がないですが。

吉井さん

えびす様は右手に釣竿、左手に鯛を持ったお姿が有名ですよね。そのお姿からも想像できるように、元々は漁業の神様で、漁師から信仰を集める神様だったんです。

街が発展して市が立つと、漁師さんはそこに釣れた魚を持っていき、売るようになります。そうしたなかでえびす信仰は商売とも結びつき、やがて商売繫盛の神様となっていきます。

室町時代になると、七福神のおひとりになられ、さらに信仰が広がり、全国的に「福の神様」として信仰されるようになりました。

篠田生米

もともとは海由来の神様だったと。

吉井さん

農村部では農業の神様(田の神)としても信仰されています。それぞれの地域ごとに、そこに住む人々の幸せを叶える神様として、漁業・商売・農業などさまざまなお顔をお持ちの神様なんです。

篠田生米

街の発展や信仰の広がりとともに、神様のお顔も変わっていくのですね。おもしろいです!

神社で働くのってどんな感じ?

篠田生米

吉井さんはなぜ神職の道を選んだのですか?

吉井さん

私はこの西宮神社が実家なので、幼いころから宮司である父の姿を見ていました。そのため、神様にお仕えするこの道を自然と選んでいました。

まず京都の大学に4年間通って一般教養を勉強し、その後東京の大学で神道を学びました。実家である西宮神社に戻る前に、鎌倉の鶴岡八幡宮で6年間修業し、4年前に西宮に戻ってきたところです。

篠田生米

いきなり実家に奉職というわけではないんですね。

そもそも神社で神職として働くには資格が必要だとか。

吉井さん

神職の資格を取れる大学があるので、そちらに通って資格を取るのが一般的です。在学中に一般教養と神道の勉強をする必要があります。

もちろん、一般家庭から神職になられる方もいらっしゃいますよ。西宮神社では1/3がそうですね。

篠田生米

一般家庭出身の方も結構いらっしゃるのですね。

今更で恐縮ですが、そもそも禰宜(ねぎ)とはどんな役職ですか?神社の役職ってあまり聞き馴染みがなくて……。

吉井さん

難しいですよね(笑)
神社には、宮司(ぐうじ)、権宮司(ごんぐうじ)、禰宜、権禰宜、出仕(しゅっし)といった役職があります。

普通の会社で例えると、宮司は社長、権宮司は副社長、禰宜は部長、権禰は普通の社員、出仕は見習い、といった感じになるかと思います。

篠田生米

なるほど、神職にも階級があるのですね。

ちなみに神職のみなさんはどんなお仕事をされているのですか?

吉井さん

参拝者の願いをえびす様に届ける「お手伝い」をするのが、我々神職の基本的なお仕事です。神社用語では「仲執り持ち」と言います。

篠田生米

ご祈祷をお願いするときなど、いつもお世話になってます!

ちなみに神職の1日はどんな感じではじまるのでしょうか?

吉井さん

初めにえびす様にお参りしてから境内の清掃をします。神道では「清浄」を大切にしていますので、お掃除は特に重点的にやっています。

えびす様と参拝者に清々しく過ごしていただけるような環境造りも、神職の大切な仕事です。

篠田生米

たしかにいつ来ても境内は綺麗で気持ちいいです!

吉井さん

また、毎日、朝夕の二度、えびす様へお食事をお供えする日供祭(にっくさい)を行っています。朝は国家の平穏や地域のみなさまの安寧をお祈りし、夕方は一日が無事に終わったことをご報告するんです。

毎月行われる祭典などを全て含めると、西宮神社には毎年800近いお祭りがあるんですよ。

篠田生米

そんなにあるんですか!?覚えるのだけでも大変そうですね。

吉井さん

現在、日本に神社は8万社ありますが、それを管理する神職は2万人しかおりません。1人で何社もみている神主さんもおられます。神社界も人手不足なんです…。

また、神社を守る地域の方も、高齢化や過疎化のため減りつつあります。神社を守る人がいなければ、神様をお祀りできません。他の神社と合併(合祀、ごうし)したり、廃社になったりするところも増えています。

篠田生米

神社界も大変なんですね…。

吉井さん

ですが、参拝者の方から「願いが叶った」と感謝のお言葉をいただいたときなどは大変嬉しく思います。みなさまが幸せを叶えるお手伝いができているなと実感でき、大変やりがいを感じます。

いつもニコニコの福の神・えびす様のもとでご奉仕できて、すごく幸せに思っています。

えびす様が見守る町・西宮の魅力

篠田生米

続いてえびす様の見守る西宮の街についてお伺いします。

吉井さんの思う「西宮のいいところ」を教えてください。

吉井さん

海・山・街が絶妙に調和しているところでしょうか。加えて美味しい日本酒や和洋のお菓子など、魅力的なものがたくさんあるのもいいですね。

篠田生米

吉井さんおすすめのお店・スポットはありますか?

吉井さん

よく娘2人を連れて行くのが、神社近くの商店街にあるエビスヤ 小松商店さんです。ここのかき氷が好きなんですよー!

新西宮ヨットハーバーもオススメです。娘たちは海や船を見ると喜びますし、私も開放的な気分になれるので好きですね。

西宮神社のこれから

篠田生米

最後になりますが、西宮神社で今後予定している新しい取り組みなどはありますか?

吉井さん

令和7(2025)年に西宮市は市制100周年を迎えます。大正14(1925)年に西宮市が発足した際は、西宮神社の本殿で奉告祭を行い、たくさんの人が集まりました。西宮市制100周年の際にも、盛大に奉告祭をしたいと考えています。

また、西宮に関わる事業をしたいとも考えていて、現在「全国のにしのみや」の名前を調べているところです。地名・石碑など、さまざまな「にしのみや」にどのような意味・由来があるのか、兵庫県の西宮とどのような関係があるのかを調査しています。

この調査結果をみなさんにご覧いただけるよう、現在準備中です。

篠田生米

市制100周年までもう間もなくですね。盛大な奉告祭と「にしのみや」の調査結果を楽しみにしています!

本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

この記事を書いた人

篠田生米

ライター

西宮のお隣、尼崎在住のフリーライター兼校正者。学生時代を過ごした西宮の魅力に取り憑かれ、以来離れられずにいる。雨男なのに低気圧がニガテ。

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