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西宮人 vol.4|SHIMPEI KITADA

Profile

北田 真平

2006 年から兵庫県立西宮病院に勤務。現在は兵庫県立西宮病院 四肢外傷センター 医長を務める。日本整形外科学会 専門医や日本 DMAT 隊員の資格も保有している。社会人アメリカンフットボールリーグ X リーグのエレコム神戸ファイニーズ チームドクターも務める。

ENA

西宮にゆかりのある、活躍されている方を紹介する「西宮人」第四弾!
兵庫県立西宮病院 四肢外傷センター医長の北田 真平さんです。

なんか診察されるみたいでちょっと緊張しますが、本日はよろしくお願いします!

北田さん

よろしくお願いします!

ENA

最初の質問なんですが、医師を志したきっかけは何ですか?

被災の経験から医療の道へ

北田さん

中学校3年生のときに阪神淡路大震災で自分も被災し、神戸東灘区の自宅で倒壊した家屋の下敷きになりました。私は幸い怪我はなかったのですが、周りの家は全滅していて、隣近所の方や友だちも亡くしました。そのとき大きな被害を目の当たりにして、緊急の事態や大きな事故が起きたときに一番必要とされるのは医療の力だと感じ、自分もその世界で働きたいと思ったのがきっかけです。
それまでは、学校の先生になって高校野球の監督になり甲子園に行きたいと思っていました。でもあの日を境にガラッと変わっちゃいましたね。

ENA

被災された過去がきっかけだったんですね。
中学生のときの災害経験から、実際に医療の世界で働かれている今、病院での一日のスケジュールはどんな感じなんですか?

北田さん

基本的に四肢外傷センターは救急の仕事がメインです。
救急車でけが人が運ばれてきたら救急の先生たちと一緒に診察します。もし緊急手術が必要であれば、その段階で手続きを踏んで手術にはいります。このような緊急手術と、前々から予定を組んでいる手術があります。1回の手術は3~4時間が平均ですが、複数個所けがをされている方の手術だと、休憩なしで9時から18時までかかることもあります。

ENA

休憩なしで9時間の手術!?交代制とかないんですか?

北田さん

もちろんみんな手術できるんですが、特殊な症例の手術だとできる人も限られてくるので、ひとりでぶっ続けでやります。
でも手術中は不思議と何も思わないんです。お腹減ったとか、しんどいとか、トイレに行きたいとも思わないですね。

ENA

結構体力勝負なところがありますね。

北田さん

そうですね。男性の大きな脚を持ちながら手術したりするので、次の日筋肉痛になることもあります。
なので体力づくりのために週に2,3回は朝早く起きてランニングしたりしています。

ENA

本当にストイックですね!
話は変わりますが、西宮の地域医療について教えてください。

北田さん

病院は大きくわけて、3つの機能に分かれています。ひとつは急性期医療という今すぐ治療が必要な大きな怪我や病気の人を受け入れる病院です。私たち兵庫県立西宮病院もこの急性期医療を担う病院のひとつです。そこからある程度状態が落ち着くと、リハビリを専門とした病院にうつります。そこからまだ時間が掛かる場合は療養型の病院にうつります。基本的にこの3つの機能の病院に分かれています。もしくは通院に切り替えて、開業されている地域に根付いた病院、いわゆるまちのお医者さんに引き継ぐこともあります。開業医の先生たちとは患者さんの情報などを連携しあったり、顔を合わせることもある関係性なんですよ。

ENA

それぞれの症状に適した治療のために他の医療機関としっかり連携されているんですね。兵庫県立西宮病院の中での四肢外傷センターの役割について教えてください。

救急の現場にでていく整形外科医

北田さん

整形外科では自分の専門しか見ない先生が多いんですが、私たちはそれは問題だとずっと思っていて、8年前に四肢外傷センターをつくりました。とにかく救急の現場にでていく整形外科医をつくろうと。

シームレスな連携で治療期間の短縮に

北田さん

救命救急は命を繋ぐ専門家。整形外科は体を元の体に組み立てなおして、元の生活に戻れるようにする専門家。それって実は独立した部門ではないんです。命がつながって、その次に体を組み立てなおすとなると、治るのに時間がかかってしまいます。これを同時並行でやっていくために、日々のディスカッション中でお互いの部門の仕事を理解してあっています。そうすることでシームレスに一番いいタイミングで手術やリハビリができ、最短で退院もでき社会復帰もできます。

ENA

治療期間が短縮されているなんて目から鱗です。現在四肢外傷センターをまとめている北田先生ですが、兵庫県立西宮病院にはいつから在籍されていますか?

北田さん

実は医者になりたての頃からここで育ててもらいました。2年で全部の科をまわって勉強し、3年目から自分の専門を決めるんですが、今の上司に出会って、この人のもとでなら頑張れると思って整形外科に決めました。自分の勉強のために東京の大学病院に1年半修行にでたんですが、またご縁があってここに戻ってきました。10年以上同じ病院に勤務している医者はかなり少ないですね。

ENA

現在は逆に若手を育てる存在になられているかと思いますが、チームをまとめる秘訣を教えてください!

北田さん

重症患者が多い兵庫県立西宮病院に来てくれる研修医たちはとても向上心の高い人たちばかりです。それでもみんな最初は大きな怪我を負った患者さんを治療するのは難しいんです。
ですのでモチベーションが高い人たちの貪欲に学びたいという姿勢をサポートするよう心掛けています。
夜間や時間外の手術が多いのですが、彼らにとって一例一例とても大切な手術なので、時間の許す限り一緒に手術に入っています。そこで彼らが次のステップにあがるためにも、自分の持っている知識をありったけ伝え、モチベーションをあげています。私自身も自分の引き出しを増やすための勉強になりますし、お互い良い刺激になっています。

手術中は勝負の場なので厳しく指導することもありますが、終わったらノーサイドです!
手術が終わると一応儀式があって、みんなでレッドブルで乾杯して帰宅するんです。
夜遅くて疲れ切っているので、すこし回復させて気を付けて帰ろう!という意味合いでやってます(笑)。
整形外科はスポーツ経験者が多くチームワークを学んできた人が多いので、やりやすいひとつの要因かもしれません。

ENA

まさにワンチームですね!
日々のプレッシャーが大きいお仕事だと思うのですが、どう向き合っていますか?

北田さん

プレッシャーは毎回感じていて、正直手術の前って怖いんです。そういう時は、今まで自分がした手術の記録を見返して、自分自身の経験をおさらいすることで心を落ち着かせて手術に臨んでいます。
手術中は緊張するんですが、ひとりではなくチームで行うので、後輩に教えたり手術中のコミュニケーションを楽しみながらだとリラックスしてできます。
長い手術は7,8時間もあって集中し続けるのは難しいので、ONとOFFをつけてリフレッシュすることで大事な箇所でぐっと集中できるようにしています。

ENA

なるほど。
当たり前なんですが、医療ドラマの世界が本当にあるんですね…!
ちなみに一番好きな医療ドラマってなんですか?

北田さん

コードブルーです!
日本医科大学千葉北総病院という日本で一番ドクターヘリを飛ばしている、トップレベルの病院の先生方が本気で医療監修されていて、かなりリアリティーを追求されています。

ENA

そうなんですね!!
ちなみに西宮もドクターヘリって飛んでいるんですか?

北田さん

西宮は都心部でヘリが降りられる場所がないので、この病院ではドクターヘリのシステムはないんですね。山間部の病院にはありますよ。
その代わりに兵庫県立西宮病院にはドクターカーがあって、1日に2,3件出ています。

ENA

救急車とドクターカーはどう違うんですか?

北田さん

一般的な救急車は医療器材がのっていて、患者さんを乗せて帰ってくるんですが、ドクターカーは医者を救急現場に運ぶものです。近くに重症患者をみれる所がないところで事案が発生すると、少しでも早く専門の先生の治療を開始するために、現場付近の救急車とドクターカーが同時に現場に向かって、途中でドッキングして医者が救急車に乗り込み、治療しながら病院まで搬送します。搬送途中から治療開始することで治療開始までの時間短縮ができるんです。列車事故などの大きな事故は必ず出動します。

ENA

本当に救急医療の最前線ですね。
ハードな仕事を続けられているモチベーションってなんですか?

患者さんからの嬉しい報告が励みに

北田さん

やはり患者さんの生の声です。一度身体が大きな怪我で痛んで、社会復帰は無理なんじゃないかと思ってしまうほどの人でも、頑張って手術やリハビリを乗り越えて、何ヶ月か後に病院にきてくれて、こんなに動けるようになりましたよ、とか職場復帰できました!とか。お子さんだったら、学校いけるようになりました!とか報告にきてくれるんですね。そう言ってもらえた瞬間に自分のモチベーションがぐっと上がって、やっててよかったなと思えます。

ENA

なるほど。とってもやりがいのあるお仕事ですが、お休みって少ないですよね?

北田さん

基本的にカレンダー通りで月曜日から金曜日は手術で、土日は学会や講演会などの病院外での仕事もはいります。それ以外は当直勤務もあるので、休日はあんまりないですね。
休みは息子の野球チームの指導をしています。
今は自分の時間がなかなかとれませんが、今はまだ体力も意欲もあって忙しい世界が好きなので、あんまり気にしていません。
色んな症例があるし、若い先生も来てくれる病院なので、いろんな人と関われることで自分の人生が豊かになっていると感じています。

ENA

仕事が楽しくて仕方ない!という雰囲気がにじみ出ていますね。
それでは西宮人恒例の質問!西宮のいいところ3つ教えてください!

北田さん

ひとつめは人柄ですね。患者さんもそうなんですが、皆さんあくせくしていなくて、穏やかで余裕のある方が多いです。お話していても面白い方が多い。二つめは山や海が近くにあって自然に囲まれているところです。時間がある時に山に登ったりするんですが、山から見える海や綺麗な景色に癒されます。
三つめは西宮神社です。人が集まる街のシンボルにもなっていて、そんな西宮神社の存在は大きいと思っています。

ENA

では最後におすすめのお店を教えてください!

北田さん

アジルさんです。
美味しいイタリアンなので是非行ってみてください!

ENA

今日はありがとうございました。
とても勉強になりましたし、私たち市民が安心して暮らせているのは、もしもの時救ってくださる先生方がいるからなんだと改めて感じました。
本当にお忙しい中ありがとうございました!

北田さん

ありがとうございました!

この記事を書いた人

ENA

編集長

みやっこ歴は約10年。 西宮の色々な魅力をもっとたくさんの人に知って欲しい! そんな想いで私なりの西宮の楽しみ方を発信していきます。

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