CULTURE

【博物館展覧会レポ】関西学院大学企画展「美術と文芸シリーズ 新収蔵品 洋画家 大森啓助コレクション展」

関西学院大学博物館の外観

お洒落な雰囲気が素敵な関西学院大学上ケ原キャンパス。正門をくぐると、すぐに広々とした芝生(中央芝生)と見事な時計台が見えてきます。

中央芝生が誰でも使えるのは有名ですが、時計台にも自由に入れることをご存知でしょうか?しかも中は博物館になっていて、展示を無料で見学することができるんです。

関西学院大学博物館企画展の案内看板

今回はそんな関西学院大学博物館で、 12月17日(土) までの会期で開催されている企画展「美術と文芸シリーズ 新収蔵品 洋画家 大森啓助コレクション展」を見学してきました。

※展示室の写真は関西学院大学博物館の許可を得て掲載しております。

今回の企画展は、関学出身の洋画家・大森啓助(1898-1987)に焦点を当てたものです。

神戸の商家に生まれた大森は、家の跡取りとして学ぶため、1916年に関西学院高等学部商科へと進学します。在学中、友人の誘いで入った絵画部・弦月画会(げんげつがかい、現在の弦月会)で、彼は洋画の世界と出会います。

企画展の挨拶文

洋画に魅了された大森は、学院を卒業すると画家・金山平三に師事しつつ、美術学校に通って絵を学びました。ほどなくしてフランスへ留学すると、現地の美術展で入選を果たし、それきっかけにパリでも名の知られた画家となっていくのです。

その後1932年に帰国した大森は、東京にアトリエを構えて、晩年まで絵を描き続けました。

関学には美術家育成のための学部・学科はありません。今風に言えば、大森は課外活動をきっかけに夢を見つけ、その道を自力で切り開いたことになります。しかも留学までして、しっかり結果を残してくるのだからすごい!

本展はタイトルに「新収蔵品展」とあるように、2019年度に大森の妻・房子氏から油彩画・スケッチなどの寄贈を受けたことがきっかけだそう。展示室には新たに博物館蔵となった絵画や資料などが並び、大森の描く世界に浸ることができます。

関西学院大学博物館の展示室1の様子
ショーケースの中に飾られた資料たち

作画対象は風景画や花、人物などさまざま。大森はコロリスト(色彩表現を重視する画家のこと)と評されていたようで、色鮮やかな作品たちには、どこか優しげな雰囲気があります。

壁にかけられた大森啓助の作品

本展で特徴的なのは、房子夫人へのインタビューで得られた情報をもとに、大森啓助の暮らしや人柄にも迫っていること。

たとえば大森は花をよく描いていますが、その多くは園芸を趣味にしていた大森が自ら育てたものだそう。展示室には色鮮やかな花の絵と共に、大森が自宅で庭仕事をしている写真(画像)も飾られています。

展示室ケースに飾られた絵画作品
展示室入口のようす

花を育て、そして描く。趣味と作品制作の両方を楽しみながらの暮らしが、大森の創作意欲の根源だったのかもしれません。

作品を通じて大森啓助の暮らし・人柄に迫る

大きな作品に目が行きがちですが、スケッチや習作(練習のためにつくる作品)などの資料も、この企画展ならではの貴重なもの。

ショーケースに入った資料

大森が日々の暮らしのなかでどんなものに興味を持っていたのかが伝わってきて、人間・大森啓助が少し身近に感じられます。

個人的にはエビやサザエなど、卓上の海産物を描いた作品が多々あることが気になりました。

関西学院大学博物館の展示室2の様子
ショーケースに入った資料たち
海産物を描いた作品もチラホラ

「たしかに海鮮は美味しいよね!」と、勝手に大森に共感していたのですが、学芸員の倉田さんいわく、大森は特に海産物が好きだったわけではないとのこと。

単に作画対象として好んだだけだったようです。そうなんだ……。

本展はタイトルに「美術と文芸シリーズ」とあるように、単発の企画展ではありません。2018年に「美術と文芸−関西学院が生んだ作家たち−Ⅰ」が開催されていて、そちらの展示でも大森啓助について取り上げています。

展示室では図録を販売しており、本展のものはもちろん、過去の企画展図録も取り扱っています。 大森啓助や関学出身の美術家たちに興味を持った方は、2018年の図録と今回の図録、セットでの購入がオススメです!

2冊の展示会図録
本展の図録(左)と 2018年の企画展図録

「 美術と文芸シリーズ 新収蔵品 洋画家 大森啓助コレクション展 」まとめ

作品や資料を通して画家・大森啓助のひととなりに迫る本展。美術に詳しくなくても、大森啓助の描く鮮やかで優しい世界が展示室に広がっています。

入館無料で気軽に立ち寄れるので、上ケ原を訪れた際はぜひ覗いてみてください!