CULTURE
2023.02.09
篠田生米
【博物館展覧会レポ】酒ミュージアム(白鹿記念酒造博物館) 「節句の人形 丸平文庫特別展示:京(みやこ)の五節句」展
全国的に有名な酒どころ「灘五郷」の 一部として、東部に位置する西宮郷(現在の西宮市)では、江戸時代から清酒造りが盛んでした。
そんな西宮市にある「酒ミュージアム」こと白鹿記念酒造博物館では、2023年1月28日(土) から「節句の人形 丸平文庫特別展示:京(みやこ)の五節句」展が開催されています。
西宮の酒造家・辰馬家で飾られてきた人形をメインに、さまざまな節句人形を紹介する展覧会です。
今回はなんと酒ミュージアムさまから直々にご招待をいただき、展示の解説をしていただきました。本稿では筆者の感想も交えながら、展示の魅力・見どころをご紹介しようと思います。
※展示室の写真は博物館の許可を得て掲載しております。
節句と人形
季節の変わり目の行事である「節句(せっく)」。元々は古代中国の考え方で、3月3日、5月5日のように奇数が重なる日は不吉とされていたんだそう。
そのため節句には無病息災や子孫繁栄を願って厄払いをする文化がありました。 季節の変わり目に体調を崩しやすいのは昔の人も同じなんですネ(筆者も1クールに1回体調を崩す)。
なお、現在の日本には江戸時代に祝日として定められていた5つの節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)が残っており、これらを総称して「五節句」と呼びます。
ひな祭り(上巳)やこどもの日(端午)も元々は節句の行事。子どもの健やかな成長を願って人形を飾る行事なのは、今も昔も変わりません。
約80点もの節句人形が並ぶ
今回の展示では辰馬家に伝わる人形のほか、京都の「丸平(まるへい)大木人形店」の資料室「丸平文庫」所蔵の節句人形がずらりと展示室に並びます。
丸平大木人形店といえば、数あるひな人形店のなかでも群を抜く存在。「丸平さん」の愛称でも知られ、ひな人形展や旧家の雛飾りの中には必ずといっていいほど丸平のひな人形が並んでいます。意図せず目にしている方も多いはず。
酒ミュージアムだからといって「ひな祭りで酒が飲めるぞ~」的な展示ではないのですヨ。
熟練の人形司の技術が光る
片手に乗るような小さな人形には、手仕事の見事な技が光ります。
たとえばこちらの「二寸雛人形」。二寸の名の通りそれぞれが7cm前後の小さなひな人形ですが、全て目がガラス製の玉眼(ぎょくがん)になっているんです。
わずか数ミリのガラス片に目の模様を書きこみ、それを小さな人形の頭部に埋め込むという、とんでもなく精密な作業が雛壇の人形全てに施されています。
こんなに小さいのにお顔からは生気を感じます。プロってすげー!
細かい作り込みに注目
なんとなく怖いイメージのある日本人形ですが、展示されている人形たちの雰囲気はとても穏やか。 柔らかな肌の質感とにこやかなお顔、丁寧に作り込まれた衣装からは作り手の愛情を感じます。
ちなみに日本人形は部位ごとに分けて制作されるそう。頭・髪・着付など、部位ごとに専門の職人さんがいて、それぞれが匠の技をつぎ込むことで1体の人形が完成するわけです。
そりゃあお高いわけよね。
辰馬家の鎧飾りも必見
華やかなひな人形も素敵ですが、豪奢な五月人形も見どころのひとつ。とりわけ目を引くのが辰馬家で飾られてきた具足(ぐそく)飾り。
細部まで丁寧に作りこまれた鎧兜はまるで本物の甲冑のようです。
今回はこれを敢えて組み立てず、バラした状態で展示しています。職人の技術がつぎ込まれた作品を隅々まで見てもらうための館のこだわりです。
まとめ
一見、お酒と関係なさそうな本展ですが、節句も酒も私たちの日常に浸透した文化のひとつ。そうした「当たり前の日常」の魅力に気付くよいきっかけになるかもしれません。
どことなく春の訪れを感じさせてくれる本展の会期は 3月5日(日) まで。 愛らしい人形たちから一足早めの春を感じてみてはいかがでしょうか?
INFORMATION
酒ミュージアム(白鹿記念酒造博物館)
- 〒662-0926 兵庫県⻄宮市鞍掛町8-21
- 0798-33-0008
- 10:00~17:00 (入館は16:30まで)
- 火曜日(祝日の場合は翌日、連休に含まれる場合は連休明け休館)、年末年始・夏期休暇
- ①阪神西宮駅から徒歩で15分②阪神西宮駅からバスで5分 交通公園前下車すぐ
- https://sake-museum.jp/exhibitions/1551/