CULTURE

西宮・人気店の舞台裏 vol.9 阪急夙川~Lanka(ランカ)~

西宮には、数々の有名店があります。一見華やかに見える舞台の裏側には、 数々のストーリーがあります。そんな舞台裏にうかがいます。

海外の蚤の市に行ったようなワクワクするお店

さくら夙川駅から徒歩2分にある「Lanka」さんは、洋裁教室と輸入手芸材料を扱うお店です。ドアを開けると、まるで宝箱のよう! たくさんの素敵な生地に圧倒され、可愛いボタンやリボンにも目移りしてしまい、あれもこれもと欲しくなってしまいます。今回は、オーナーの片岡由季さんにお話をお聞きします。

― まずはじめに、こちらにお店をオープンされたきっかけを教えてください。

片岡さん:「もともと手芸や何かを『つくる』ことが好きで、2003年に母のギャラリーの一角に『Lanka』をオープンしたんです。当初は手芸用品の販売のみだったのですが、こちらに移転してはじめはカフェをしていましたが、しばらくして『洋裁をしてみたい』という方が多くて、カフェのあったスペースを改装してソーイングのレッスンを始めました。」

― 素敵な生地がたくさんありますね。どうやって選ばれているのですか?

片岡さん:「生地は海外のものが多いですね。以前は毎年フィンランドに買い付けに行っていました。海外に住む友人からも、どんどん送られてくるんです。フィンランドでは偶然見つけたお店に入ってみたり、地元の生地屋さんやヴィンテージ ショップで見つけたものを買い付けるのですが、生地ってすごく重いので、持っているうちに腕にあざが出来たりするんですよ。(笑)」

― あざが出来るんですか! 確かに、1本の生地でもすごく重いですね。

忙しい時代にピッタリのソーイングレッスン

―ところで、こちらに来られる方は、ソーイングレッスンの生徒さんが多いですか?

片岡さん:「そうですね、ワークショップを中心にやっています。作るのはお洋服が多いのですが、入園入学の時期はお母さんがバッグや上履き入れなどを作りに来られます。 作ってみたい方はワークショップで手取り足取りご説明しますが、こちらでお作りすることもできますよ。ワークショップに来られる方は初心者の方も多いんです。ミシンを使うのが中学以来の方とかもいらっしゃいます。 」

― 入園入学の準備は私も経験していますが、用意するものが多くて大変でした。私も裁縫が好きなのですが、手の込んだことは出来ないので、ユニクロで買った子供服にリボンを付けたりと、少し手を加えたりする程度です。

片岡さん:「デコクロですね。そういう方もいらっしゃいますよ。ユニクロのカーディガンのボタンを付け替えたり。持って来てくだされば、その人のレベルに合わせてリメイクのアドバイスもさせて頂きますよ。縫わずに貼るだけでも素敵ですし、凝ったものが出来る方なら『ここを縫って、そこを縫って』ってご説明します。 芸大では美術、絵画を専門にしていたので、色合わせがすごく好きなん です。」

― アイデアが浮かばないので、とっても助かります。お洋服も作りたいのですが、ファスナー付けが苦手なんです。

片岡さん:「ワークショップではファスナー付きのワンピースも作りますが、しつけ糸はいっさいしないやり方なんです。初回レッスンではロングスカートかワイドパンツ、タイトスカートの3点から1つ選んで作ってもらい、どれくらい縫えるのかを見せてもらうんですよ。そして、『次は、こんなのどうですか?』って提案しながら進めていくスタイルなんです。初回からファスナー付きのワンピースは難しいですが、皆さんそれぞれレベルが違うので、そのレベルに合わせて進めていきます。ある程度縫えるようになってきたら、日傘を作ることも出来ますよ。」

― 日傘ですか! キットで売ってるのを見たことがあり、作ってみたいなって思ったんです。

片岡さん:「日傘は、きっちり1cm幅で縫えないと傘の骨にはまらないんですよ。(笑)きっちり1cm幅で縫えるようになれば、作ることが出来ます。Lankaのレッスンは3時間で1着作るのが目標です。ファスナーが付いてるワンピースでもそうです。早くきれいに出来る独自の方法を編み出しているんです。(笑)早く仕上がるので、着て帰られる方も多いですよ。忙しい時代のソーイングですね。」

― 3時間で完成ですか! お洋服作りのハードルが一気に下がりました!

片岡さん:「皆さん、作品が出来上がった時に『嬉しい!』ってすごく喜んでくださると、やってて良かったなって思いますね。」

フィンランドのヒンメリの教室も

片岡さん:「こちらでは、先生に来て頂いてヒンメリの教室もやっているんですよ。ヒンメリはフィンランドのものなのですが、ライ麦の茎から出来たわらを使っています。この四角い12面体はわらを12本使っていて、12か月無病息災でいられますようにって意味のあるお守りみたいなものなんですよ。日本の主食はお米だけど、フィンランドはライ麦のパンを食べるので、主食のものを使っているんです。結婚のお祝いに作ることもあるそうです。つやがあるので光に当たるとキラキラしてきれいです。夜はライトが当たると影が素敵です。」

― 本当にフィンランドがお好きなんですね。

片岡さん:「そうですね。Lankaもフィンランド語で『糸』を意味するんです。初めて一人旅をしたのもフィンランドだったのですが、その後も何度も行っています。ヨーロッパの田舎町のような感じもしますね。」

― 他にはどんな『つくること』がお好きですか?

片岡さん:「お料理は好きですね。タイ料理をよく作ります。DIYも好きなので、壁紙を張ったり、お店の糸の棚を作ったり。Lankaの建物の周りは自分で木を張ったんですよ。この椅子も、自分で脚をつけて作ったんです。大学では絵のパネル張りもしていたので、椅子の張り替えの生地を見に来られた方には『こんな生地が向いてますよ。』ってアドバイスしています。他には、吹きガラスをやったり、織物もしていました。そうやって色々やってきたことで、今、色んな方向からアドバイスできるのかな。」

洋裁教室だけでなく、お直しもされています

Lankaさんと言えばソーイングのイメージなのですが、カバンのお直しや時計のオーバーホールもされています。

こちらの時計は主人の祖父から頂いたものなのですが、かなり古いタイプだからか、電池交換を2軒のお店で「うちでは出来ない」と断られました。とても気に入っていたので泣く泣く諦めていたのですが、Lankaさんで電池交換して頂くことが出来ました。革製品の修理は『吹き付け加工』という特殊な技法で、傷や汚れが取れて新品のように仕上がります。『Lanka 修理』をぜひご覧になってくださいね。

― 片岡さんは、お料理だけでなく、たくさんの趣味をお持ちですね。西宮では、どのようなお店がお好きですか?

片岡さん:「苦楽園のこ・と・の・葉さん。お花屋さんなのですが、同級生がやってるんです。一緒にフィンランドに買い付けに行ったりもするんですよ。 fontegara (フォンテガーラ)さんや Dante (ダンテ)さんのピザもおススメです。アフグリベジさんのお野菜は無農薬野菜や有機野菜を扱っていて、とてもおいしいです。

― 最後に、片岡さんの夢を教えてください。

片岡さん:「夢は本を出すことですね。パターンの本や、そういうものに関わる本です。まだ漠然とですけど、これだけいっぱいパターンを作っているから。(笑)パターンを作るのは大変なんです。原型のパターンがあって、そこから計算しながら広げたり絞ったりして展開していくんです。私がデザインして、パタンナーさんに作ってもらっています。これ、全部パターンなんですよ。100以上あると思います。サイズはS、ML、XLでだいたい3パターン作っているので、だいたいの大人の方には対応できます。パターンの販売もしていますが、主にレッスンの生徒さん用に作っているので、作り方まではお付けしていないんです。」

取材を終えて

Lankaさんは、片岡さんのこだわりがつまったお店です。素敵なものがたくさん並んでいて、隅々まで見逃さずにゆっくり眺めていたくなります。奥からは楽しそうなワークショップの会話が聞こえてきて、私もやってみたくなりました。ソーイングってやってみたいけど難しそうって思われている方、それぞれに合わせて丁寧にアドバイスしてくださいますので、一度立ち寄ってみてくださいね。大切なバッグや靴の修理も、ぜひ相談してみてください。

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Lanka