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西宮・人気店の舞台裏 vol.3 甲東園~KINGLY COFFEE(キングリーコーヒー)~

西宮には、数々の有名店があります。一見華やかに見える舞台の裏側には、 数々のストーリーがあります。そんな舞台裏にうかがいます。

KINGLY COFFEE (HPより)

KINGLY COFFEEは兵庫県西宮市の自家焙煎スペシャルティコーヒー専門店です。産地の風味特性を明確に持ったスペシャルティコーヒーの豆を活かす焙煎を行い、新鮮なうちにお客様へお届けします。
それぞれの豆が持つ豊かな味わいをぜひお楽しみください。

変わり続けた10年

阪急甲東園駅から東へ5分ほど、中津浜線沿いにある「KINGLY COFFEE」さんは、今年10周年を迎えられます。今回はオーナーの松井さんに「KINGLY COFFEE」と共に歩まれた10年間をお聞きします。

— 10周年おめでとうございます。「お店を10年続けるのはむずかしい」とよく言われますが、どのような10年でしたか?

松井さん:「変えに変えて来た10年でした。 変化し続ける方が面白いかなって思っています。 初めはカフェで始まったんですけど、今はほとんど、インターネットの通信販売がメインになっている状態です。自分の考えも10年後は古いものになるので、毎年ブラッシュアップといいますか、その時代に応じてキングリーコーヒーも変わっていこうかなって思います。」

— 守り続けるのではなく、変わり続けるんですね!

松井さん:「キングリーブレンドもそうなんです。実は、一年中何回も味が変わっています。ブラジルとコロンビア、グアテマラの三種類、それぞれ最上位ランクのコーヒー豆が入ってるんですけども、仕入れる農園によって味が変わるんですね。なので、その時仕入れた豆の味わいで作っています。お店のコンセプトは農園を応援することなので、うちがお店の味を作れば、それが邪魔になってしまいます。農園の方の頑張りをそのまま出して、お客様に説明するのが仕事です。あえてお店の味を作らず、その時仕入れたコーヒー豆が持つ味わいを引き出すだけです。」

— 10年で、お客さんも変わりましたか?

松井さん:「ずっと来てくださる常連さんもいらっしゃるんですけども、お店の客層は変わっていったと思います。初めはカフェ利用のお客様が多かったのですが、物販のお客様に変わっていきましたね。家でコーヒーを勉強してみようという方が増えたのかなって思いますね。」

— 以前は、農園にも向かわれてましたよね?

松井さん:「たまに行ったりしてましたね。業界としては、個人のお店が農園に行くことはあまりなくて、商社さんが行って買われたものの中から選ぶのが普通の流れなんですけども、自分たちが買っている農園の取り組みとか頑張りを自分の目で見て、お客様に伝えると真実味が増すと思うんです。もちろん、買い付けをする時もあります。」

— 西宮にも自家焙煎のお店が増えていますが、今後、お店を増やされるご予定は?

松井さん:「初めに決めていたことがあります。店舗を増やさないこととスタッフを雇わないことです。コーヒー店という看板を出して始めてるんですけど、自分としては自営業という気持ちなんです。スタッフさんが入ると、スタッフさんに対して目標となる人間として働き方を提供しないといけないっていう「かせ」が付いてしまうと思ったんです。自分だけで作り上げていきたいんです。」

— コーヒーにはまり出したきっかけは?

松井さん:「脱サラして海外留学でロンドンにいたんです。当時、勉強したりするのに現地チェーン店のカフェをよく利用していました。こういう仕事をしてみたいなって思い、帰国してからスターバックスで働き始めたのがスタートです。エスプレッソマシンが毎年進化している時代だったので、毎年面白い情報が上がっていました。例えばラテアート。初めは1つのカップに葉っぱ1枚描くのが凄い時代だったのに、2年目には4枚描くのが普通になり、3年目には10枚描くっていう、進化が激動の時代だったので、面白くてそのままコーヒー業界に入っていきました。」

— ロンドンでは、よく紅茶が飲まれていますよね。

松井さん:「ロンドンでは、紅茶は日本のお抹茶みたいなポジションでした。紅茶は、外で飲むとなれば、上流階級のたしなみのアフタヌーンティー、家で楽しむのがハイティーといった感じですね。お店をみつけても高級感があって、一人で入りづらい雰囲気でした。」

— コーヒーやカプチーノでぬるめをおススメされるお店もありますが、どうしてでしょう? 私は、熱いのが好きなのですが・・・。

松井さん:「コーヒーの業界では、評価の項目がいくつかあります。例えば、酸の質とか口に含んだ質感、コーヒーにザラつきが無いか、などです。その項目の点数の高いものが評価が高いコーヒーになるのですが、それが美味しいかどうかは「好み」になりますよね。温度もそうで、熱いかぬるいかとかも、どっちが良いって無いんです。好みの問題なんでね。何より、飲まれるご自身が自分の好みを知っていることが一番大切だと思いますね。お店に勧められて流されるより、自分の好みを自信もって言われた方が良いかなって思います。」

— 1日の流れを教えて頂けますか?

松井さん:「だいたい7時半に来て、オープン前に掃除とか機械のセッティンと同時にコーヒー豆の焙煎ですね。焙煎の機械がちょっと大きいので、冷たい機械が温まるまでの暖機運転に40分くらいかかります。焙煎にかかる時間は1時間ちょっとですが、今度は熱々の機械を冷ましていくのに時間がかかったりします。お店が開いたらモーニングのお客様のご注文を作ったり、空いた時間でネット販売の商品の梱包をしています。」

— 松井さんの尊敬する方を教えてください。

松井さん:「沖縄に、豆ポレポレさんというスペシャルティコーヒー専門店があるのですが、そちらの店主の中村さんって方は凄いなって思います。沖縄の気候では、ぎりぎりコーヒー豆は栽培できないのですが、コーヒー豆を栽培できるまでもっていくプロジェクトに関わったり、色々と熱心に研究されています。何年か前の焙煎師の世界大会2位の方なんですけども、焙煎の技術もすごく研究されていて、コーヒーにも精通されています。コーヒーの勉強仲間としても尊敬しています。」

— 西宮の好きなところは?

松井さん:「西宮に住まわれている方、みなさん素敵だなって思います。色んなことに対して、引くことなく色々と試される方が多いかなって思います。コーヒーも毎年進化してるので、そういう雰囲気を感じ取ってもらえる方が多いようで、色々な目線を持ってる方が多いと思います。西宮のコーヒー屋さんも皆さん素晴らしいので、市外の方にもお勧めしたいです。」

— 最後に、これからのキングリーコーヒーが目指すところを教えてください。

松井さん:「コーヒーにとらわれないようにはしたいですね。これからどうするか決めないこと。何をしても良いかなって思っています。例えば、スターバックスも、もともとスターバックスコーヒーだったのが、今はスターバックス社になっていて、コーヒー以外のことにも力を入れています。同じように、色々な目線でなんでも取り組める環境を作っていくのが夢ですね。コーヒーの定義も変わってきているので、コーヒー屋としても変わらないといけないし、コーヒーだけでおさまっていて良いのかなって思います。コーヒー屋さんも、色んなスタイルや楽しみ方が生まれていますしね。」

KINGLY COFFEEイチオシ!「おちないコーヒー」

松井さんが名づけられた「おちないコーヒー」とは・・・

ブラジルにある「ダス フローレス農園」の「ス―パーボイア」と呼ばれる特別なコーヒーを使用しています。こちらの農園では、コーヒーの実を仕分ける方法として、コーヒーを水流に入れ、浮かぶ完熟の実と底に落ちる未熟な実に分けます。さらに、栄養の行き届いた大きな実と小さな実に分けます。ス―パーボイアは水に浮かぶ完熟で、さらに大きな実のみを使用した、質、量ともに高品質のコーヒーとなります。

実際、松井さんが農園に出向いた際に、農園の方から「落ちないよ」と仕分けの説明を受けました。その時に「おちないコーヒーにしよう!」とひらめいたそうです。「おちないコーヒー」はス―パーボイア100%で、他のコーヒー豆はブレンドされていません。同じ豆で三種類の焙煎豆を作り、ブレンドされています。まさに、「ブレンドでないブレンド」です! 

取材を終えて

すっかり街の一部になられた「KINGLY COFFEE」さん。今回は松井さんの講義を受けているような感覚で、とっても楽しかったです。松井さんからは「変わり続ける」という言葉を何度もお聞きしました。10年間守り続けるのではなく、時代の流れにも合わせつつ、常に前を見て進み続けておられます。型にはまらず、常に動けるように・・・。10年後にまたお話を聞くことがあれば、どんなことをされているのでしょう。 ワクワクしますね! 豆の保存方法もお聞きしたところ、2、3週間で飲み切るのであれば常温保存がおススメだそうです。冷蔵、冷凍の場合、すぐに冷蔵庫に戻すのを忘れてしまうと結露してしまい、全部ダメになってしまうそうです。 我が家は豆の消費が早いので、常温保存にします! ありがとうございました。

INFORMATION

KINGLY COFFEE(キングリーコーヒー)

  • 兵庫県西宮市上大市3丁目5−6-001
  • 0798-61-2240
  • 9:30am – 18:30pm(Drink/Food LO18:20pm)
  • 日曜日・月曜日・祝日
  • 阪急甲東園より東へ 徒歩5分
  • http://kinglycoffee.com/index.html