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西宮・人気店の舞台裏 vol.12 阪急甲東園~cup of talk coffee~

西宮には、数々の有名店があります。一見華やかに見える舞台の裏側には、 数々のストーリーがあります。そんな舞台裏にうかがいます。

阪急甲東園から徒歩2分、細い路地を入ったところに『cup of talk coffee』があります。おいしいコーヒーを飲みながらホッと一息つきたい、でも少し誰かと話したい。ちょっぴり疲れた心をほぐしてくれるお店です。今回は代表の丸山 いつ季さんにお話をお聞きします。

お店をオープンするまで

― 大学時代に起業されたそうですが、きっかけは何でしたか?

丸山さん:「大学2年生の時に、起業したい人を応援してくれるゼミに入ったのがきっかけです。 そのゼミに『マネーの虎』大学バージョンがあり、『出てみないか?』と声をかけて頂きました。その頃コーヒー屋さんでアルバイトをしていて、バリスタコンテストにも出ていたのですが、その時に『こんなお店があれば良いのに』って思ったことをOBである経営者の皆さんの前で話したら、『絶対にやった方が良い!』と言って頂けたんです。もともとは就職するつもりで大学で過ごしていたので、起業するか就職するかで悩みましたね。

― それで、起業することにされたんですね。

丸山さん:「そうですね。会社を設立したのが大学2年生の3月で、学業と両立しながら卒業までは大学内の店舗を運営させてもらいました。」

― お店は西宮にと考えていたのですか?

丸山さん:「2年間の大学生のあいだは、平日は学校で営業して、休日は地元の西宮で出店していました。色んな場所でやっていくなかで西宮が手ごたえがあったというか、私のやりたいことに合っていたので甲東園にオープンしました。」

「あなたのコーヒー」ができるまで

― cup of talk coffee と言えば、『あなたのコーヒー』ですね。

丸山さん:「これは、私がアルバイト先でバリスタコンテスに出たことがきっかけです。コンテストの一部で、お客様のニーズに合った豆の選び方を学びました。これがもし『今日もあなたに合ったコーヒーが飲めますよ』ってなれば毎日何気なく飲むコーヒーの満足度が上がるんじゃないかって、ずっと思っていました。コーヒーのことを詳しくない方からすれば、どれを選んで良いのか分からず『おすすめどれですか?』となることが多いと思うのですが、そこで誰もが自分の好きなコーヒーを飲めるシステムがあれば良いなって考えて、『あなたのコーヒー』のボードを作りました。経営者の方々にこの話をしたら、日本でもこういう事をやってるお店が無かったのと、一人ひとりのニーズに合ったコーヒー、その人に向き合ったコーヒーを出せると言うのが良かったようです。『これは他に無いものや』って言って頂きました。」

― ポイントカードは、お客さんに渡さずデータで残していますよね?

「そもそも、お店をやりたい理由として、その人の日常や心を豊かにするのが最終的な目標で、そのためには一人ひとりと向き合った接客やドリンクの出し方を大事にしたいと考えています。「あなたのコーヒー」であったりとか、「cup of talk」というのも、一対一だからこそ出来ることなんです。ポイントカードも貯めるのがが目的じゃなくて、お客様の情報をスタッフが共有したり、お客様の小さな情報って抜けてしまうので、それを1つ1つ残していくことで、またお客様が来られた時に『あ、あの人か!』って思い出すことができます。あの時の話をもう一度出来たりとか、そういう風に向きあってくれているなって感じて頂けるきっかけ作りのためのポイントカードなんです。」

― 美容師さんみたいですね。お客さんは覚えてくれていると嬉しいと思います。

― お店をやっていて良かったことを教えてください。

丸山さん:「お店としては毎日同じことの繰り返しだけど、お客さん一人ひとりと毎回違った会話ができたり、お店に来て頂いたことでお互いが笑顔になり『心が通じてるな』って感じられる瞬間がたくさんあります。毎日来て頂いても必ず皆さん変化があるし、私も心が豊かになってると感じられる時、お店をやってて良かったと思います。お客さんの日常や心を豊かにするのが目標だけど、自分にもかえってきてるなって感じるんです。」

学生の新しい発想力をお店につなげる

― 丸山さんは「代表」でいらっしゃいますが、会社のシステムはどういう形になっているのですか?

丸山さん:「社員ではないのですが、スタッフは10人ほどいます。大学生でまだ店舗を持っていなかった時でも、何かしらずっと動いている状態を作りたくて、一緒にやりたいスタッフを集めていたんです。当時からミーティングして企画を考えていて、それが店舗が出来てからも続いています。ミーティングを通して色々な企画などを考えてくれています。スタッフはほとんどが学生です。私たちからしたら学生の新しい発想やアイデアを貰い、学生はコーヒー屋で色んな経験が出来る。『WIN WIN』の関係です。」

― お店に来るたび、いつも新しいドリンクや企画もありますね。

丸山さん:「基本的に参加型のコーヒー屋にしたいんです。お客さんにスタッフが考案したドリンクの中から飲みたいものを投票してもらったり、交換日記や「voice to voice」もそうです。常に何かしらお客さんが参加できるような形を考えています。たくさんメッセージを書いて頂いて嬉しいです。

― 甲東園の他のお店との交流はありますか?

丸山さん:「ありますよ。コーヒーって人をつなげるものだと考えているので、甲東園のお店とも積極的に関わっていきたいです。昨年のクリスマスの時は『甲東園で一番楽しいクリスマス』と言うコンセプトでスタンプラリーを企画しました。小さな規模でしたが、今後は拡大していきたいです。」

― 最後に、これからの「cup of talk coffee」を教えてください。

丸山さん「先ほどもお話したように、お店のコンセプトは『お客様の日常や心を豊かにする』ことですが、もう一つ、『コーヒーを好きになるきっかけ』となるお店になりたいというのがあります。テイスティングトラベルあなたのコーヒーのように誰もが気軽に体験できるものを用意して、コーヒーって面白いって思えるスタートラインを作れるお店になりたくて。コーヒー好きの分母を増やすのが目標なので、もっと店舗を増やしたい気持ちもあります。そしてその分母が増えてきた時には、次のステップを楽しめるお店を作りたいですね。」

「あなたのコーヒー」をいただきました

ボードを見ながら好みを聞いてもらい、自分に合ったコーヒーを選んでいただきました。コーヒーそれぞれに名前があり、カードの裏側にもコメントが入っています。

まずは1枚目。この中から自分の好みを選びます。

コーヒーの酸味、私はちょっと苦手です。

そうやって選んで頂いたのが「FIRST(ファースト)」でした。次回も同じコーヒーをお願いしても良いですし、また違ったものを選ぶのも楽しいです。

「FIRST」は酸味がある方だそうですが、私が今まで苦手としていた酸味ではなく、軽くて飲みやすい印象でした。

TASTING TRAVEL(テイスティングトラベル)は、その日に頂いたコーヒー以外にもテイスティングしたコーヒーのスタンプを押してもらえます。いっぱいになるとコーヒー豆のプレゼント、さらに次回ドリンク30%オフになります。取材に伺った日、ちょうど全て埋まったのでコーヒー豆を頂きました!

モーニングセットは10時~12時半までです。パンはNicoさんのものを使用されています。こちらのパンはデニッシュのように柔らかい食感、表面はサクサクです。ゆっくりいただこうと思うのに、ついつい口に運んでしまいます。

メープルシナモンバニラトーストもおススメです。おいしいパンが食べたい、でも甘いものも食べたい時にピッタリです。コーヒーは濃い目のものを選んでいただきました。

取材を終えて

丸山さんは相手との距離感を取るのがとてもお上手で、いつも癒されています。丸山さんの尊敬する人はお母様だそうで、丸山さんが相手を思いやる精神はお母様から学ばれたそうです。親の立場として、私もいつか娘からこんな嬉しいことを言ってもらえるようになりたいです。まずは皆さんも、「あなたのコーヒー」を見つけてくださいね。きっと理想のコーヒーに出会えます。

INFORMATION

cup of talk coffee