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西宮・人気店の舞台裏 vol.13 阪急甲東園〜 chocolatiére DÉLICES moi ~

西宮には、数々の有名店があります。一見華やかに見える舞台の裏側には、 数々のストーリーがあります。そんな舞台裏にうかがいます。

関西学院大学のすぐそばに、チョコレート専門店「chocolatiére DÉLICES moi(ショコラティエール デリスモア)」があります。「デリスモア」は、フランス語で「私にとって最高の喜び」という意味だそうです。お店に入ると、プレゼントはもちろん、頑張った自分へのご褒美に、どれにしようか迷ってしまう可愛らしいチョコレートがたくさん並んでいます。今回は、オーナーの大勝 久美子(おおかつ くみこ)さんにお話をお聞きします。

お店をオープンするまで

ー まず初めに、こちらにお店をオープンされたきっかけを教えてください。

大勝さん:お店をオープンしたのは2012年なのですが、それまでは、チョコレート会社の「Goncharoff (ゴンチャロフ)」で商品開発をしていました。「いつかお店を持ちたい。」と、ずっと思っていたので、「今かな!」と決断できたタイミングで独立しました。

ー 初めから、この辺りにお店を開こうと考えていましたか?

大勝さん:いえ、場所は結構迷いました。母校である関西学院大学(関学)の先生に相談したら、「この辺にしたら良いんじゃない?愛校心の強い人が多い大学だから、みんな応援してくれるよ。」と背中を押してくださり、この辺りで探しました。物件探しは1、2年かかると言われていたので、長いスパンで見ていたのですが、1ヶ月くらいで見つかったんです。この辺りは、もともとテナントの数が少なく、駅から遠くて商圏としては条件が良くないのですが、「関学出身でチョコレートを作っている」とアピールしやすいと思い、直感で決めました。

ー 会社を退社されて、いよいよ準備に入られたんですね。

大勝さん:物件がすぐに見つかったので、忙しかったですよ。チョコレートの会社なので、バレンタインを見届けるまでは辞めたくなくて。自分が開発したチョコレートの結果を見てから3月に退社しました。お店のオープンも3月末だったんです(笑)。

ー 同時進行されていたのですね!でも、そういうのって波に乗ってしまう方が良い時がありますよね。 

ー オープンしてからは、どんな様子でしたか?

大勝さん:オープン当時は、西宮にもチョコレート屋って少なかったんです。だからやろうと思ったのもあるのですが、周囲の方には「なんでチョコレート屋?パン屋が良かった。」「ケーキ屋が良かった」と言われましたね(笑)。なので、分かってもらえるまで時間がかかると思いました。たまたま、母校のOB通信に載せていただき、その冊子を握りしめて来てくださる年配の方もいらっしゃって、今も支えられています。

ーまさに、愛校心ですね。 ところで、このお仕事に興味を持たれたのは、いつ頃ですか?

大勝さん:母親がお菓子やパンを作るのが得意で、「楽しそうだな。」って、いつも思っていました。私も「作る」ことが好きで、おじいちゃんにクッキーを焼いて送ったりしていたんです。おじいちゃんがとても喜んでくれて、「お菓子はパンやお料理よりも人をハッピーにさせる力が強い」と思い、ケーキ屋さんになりたいと思うようになりました。

ー 製菓の学校は選ばなかったのですか?

大勝さん:高校を卒業したら製菓の専門学校に行くのが当時の流れだったのですが、勇気がなくて。両親の助言もあり、大学に進みました。パティシエになりたい気持ちが常にあったので、お店を開く時に必要だろうと商学部を選びました。在学中も、「いつかお店を持ちたい」という気持ちは、いつもありました。

ー すべてつながっているのですね!さて、オープンされてから、色んなことがあったと思いますが、お店をやっていて楽しい瞬間は、どんな時ですか?

大勝さん:皆さんに、まだ食べたことのないものを食べて喜んでもらいたいので、新しく美味しいものが出来たときは、すごく嬉しいですね。

新商品は順序立てて、何度も試作を繰り返す

ー 季節ごとであったり、イベントに合わせたりと、新しい商品がたくさん出てきていますが、これらのメニューはどのように出来上がるのですか?

大勝さん:思いつきで「これだ!」みたいなのはないんですよ。きちんと順序立てて考えています。商品開発を6年やっていたので、やはり「新しいものに反応してもらえるかどうか?」を考えるのが好きなんです。ベーシックなものも作り続けることはもちろんですが、それだけじゃなくて、何か光るものを作りたいと思っています。

ー クリスマスショコラも可愛いですよね。プレゼントにすると、とても喜ばれます。先ほども、「順序立てて」と仰っていましたが、どのように商品を作り上げていくのですか?

大勝さん:まず、流行っているスイーツなどを雑誌で見て勉強して、実際に食べに行ったりします。それを自分なりに落とし込んで、色んな商品に反映させます。美味しそうなフルーツなどがあれば、そこから考えることもあります。素材ありきの部分と、トレンドから引っ張ってくるのと。色々とありますね。

ー 独立してから、どのように変わりましたか?

大勝さん:会社にいる時は、制限や縛りがありました。会社の名前を背負っているわけですから、1つのものを決めるのに何度も会議が開かれます。色んな人の気持ちを汲んでいかないといけないので、大変なんですよね。今、出来上がったこの商品を、このタイミングで売れば、もっと売れるのになって思っても、パッケージや材料やらで、最短でも売り出されるまでに半年くらいかかるんです。仕方がないことなのですが、そこが引っかかっていましたね。その点、自分のお店だったら、自分の気持ちがしっかり固まってやる気さえあれば、すぐに売り出すことが出来るので楽しんでいます。

ー この仕事をしていなかった…とか、考えたことはありますか?

大勝さん:考えたことはないですね。この仕事に就けて本当に幸せです。

- そこまで言い切れるのは、さすがですね!まさに天職なのですね。

人と人とのつながり

ー たくさんの方に出会われてきたと思いますが、大勝さんが尊敬されている方は、どなたですか?

大勝さん:ゴンチャロフで開発をしていた時の上司を一番尊敬しています。その人がいなかったら今の人生は無いと思っています。2人で商品開発をしていたのですが、私が提案したものに「よし、やってみよう!」と言ってくれて、何でもやらせてもらいましたね。本部の開発会議にかけるので、上司も責任があったと思いますが、私がやりたいと思ったことは、いつも認めてくださいました。お父さんみたいな存在でしたね。

ー やはり、出会いというか、人間関係で人生が変わりますよね。

大勝さん:そもそも、ゴンチャロフの会社に入社できたことがラッキーだったんです。最終面接の時に「現場に入れてください、現場でお菓子が作りたいんです。」と訴えたのですが、「大卒だったら、営業か総務に。」と、皆さんは反対されたんです。でも、当時の会長が関学の商学部出身で「採用するよ。」と言ってくださったんです。『お菓子が好きな人』を探していたと思うんです。それで、しばらく製造現場で経験を積んでから、開発部に声をかけていただきました。

お子さま限定のコーナーがあります。

ー ところで、お店には可愛いコーナーがありますが、ママになられて、変化はありましたか?

大勝さん:まず、時間がないですね(笑)。でも、時間が限られているから、お店を続けていられると思います。このコーナーは、お母さんにゆっくりお買い物をして欲しくて作ったものなんです。お子様がお買い物をして待っていられるように。お母さんは外で見ていて、お子様がひとりで買い物に来てくれることもありますよ。

オープン当初からのお客様は、遠方からも

ー お店をオープンしてから、どんなことが大変でしたか?

大勝さん:オープンして1年後位に、「LIFE ~夢のカタチ~」と言う番組が密着で入ってくれたんです。テレビの反響はすごくて、お店の前に大行列が出来ていました。当時はほとんど1人で、スタッフも1人でやっていて、徹夜続きで作っていましたね。独身だったし、結構無理をしていました。それでも、お客さん全てに商品が行き渡らなくて、最後は謝罪でした。夜な夜な作っていたので、お客さんから「顔色が悪いよ。そろそろ休んだ方が良いよ。」と言われましたね。その辺りから、美味しいものを作るためにも、きちんと休みを取ろうと思うようになりました。 

ー やはり、体が資本ですね。

大勝さん:あれがなかったら、多分お店は続いていなかったと思います。あの頃に来て下さった方は、今も遠くから来てくださいます。

大勝さんから若い世代へのメッセージ

ー この立地ですので、大学生が進路について相談に来られることもありますか?

大勝さん:私が大学を出た頃は、お店を持つとかって少なかったんですね。でも、今の大学生は起業意欲の強い人が多くて、お店に質問や相談に来られることがよくあるんです。そうやって門を叩いてくれる人がいるのはとても嬉しく思っています。私自身、悩みに悩んでたどり着いた道なので、モヤモヤしている不安な気持ちが本当に分かるんです。でも、その不安な気持ちは、終わってみたら本当に小さなことなんだよって一番言ってあげたいですね。大学生に限らず、小学生でも、誰にでも。その時はね、それが全てみたいになるんだけど、全然大丈夫だよって伝えたいですね。応援したいです。

ー そうですよね、その時はどうしようもない大きな壁に見えてしまうんですよね。誰しも、そういう経験を経てステップアップしていくものですね。私も以前、年配の方に「それもまた経験!」と言われたことがあります。

ー 最後になりましたが、西宮の好きなところを教えてください。

大勝さん:西宮には田舎もあり、都会もあるので子育てしやすいですね。『にしのみや洋菓子研究会』と言うものがあり、会合が月に1度開かれています。お店同士の繋がりを大事にされている方が多くて、そういう交流は事業者としても楽しいですね。

- 西宮には、有名な洋菓子のお店がたくさんありますよね。皆さんが繋がりを持っておられるのは素敵なことですね。本日は、ありがとうございました。

さっそく、いただきました!

左から時計回りにベイクドショコラノワ、ミントシトラス、ハニー・アグリューム、タッセドゥチャイ、デリスノワール、フィグ・ルビーです。西宮の農園のイチジクや生はちみつ、兵庫県産の紅茶など、どれも素材にこだわって丁寧に作られています。

ミントシトラスは、一言で言えば「爽やか!」で、日向夏の香りが優しく、ミントも強すぎずスッキリしています。フィグ・ルビーはイチジクの酸味がほど良くて、シャンパンに合いそうです。ハニー・アグリュームは、生姜のピリリ加減が絶妙で、じっくりと味わいたくなります。

チョコレートの他に、アイスや焼き菓子、ケーキもありますが、おすすめなのが『デリスモアの至福のコーヒーゼリードリンク』です。この商品が出来上がるまでに、何度も家族会議が開かれ、ネーミングは小学生のお嬢さんがされたそうです。

お嬢さんは、ちょっぴり?恥ずかしやさんだそうで、手書きの素敵なメニューがこんなところに!本来のメニューの裏側にあるんです。

ゴロゴロっと大きめのコーヒーゼリーと牛乳、さらにクレームショコラも一緒に楽しめる、なんとも贅沢なドリンクです。ゼリーは甘過ぎず風味が良くて、クレームショコラを引き立てています。

取材を終えて

デリスモアさんのチョコレートは、どれも可愛くて、アクセサリーを選ぶように、ショーケースの前でしばらく眺めていたくなります。口に入れた時の満足感と余韻を楽しみたいので、1日に2個ずつ頂きました。パクパク食べてしまうなんて、もったいないですね。

独身時代にオープンされたお店ですが、今ではお嬢さんと商品開発のお話をされるようになるなんて、とても素敵ですね。お嬢さんは、バレンタインの友チョコを大勝さんと一緒に作っているそうです。お友達がうらやましい!楽しそうにお仕事しているママは、自慢のママですね。ありがとうございました。 

INFORMATION

ショコラティエール デリス モア

  • 西宮市上甲東園 3-9- 8
  • 0798-31-7038
  • 水木金11時~16時 土11時~17時
  • 公式サイトにて告知
  • 阪急甲東園駅より徒歩15分 甲東園駅から904m
  • https://www.instagram.com/delicesmoi/?hl=ja